「上級国民」大批判のウラで、池袋暴走事故の「加害者家族」に起きていたこと
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「上級国民」大批判のウラで、池袋暴走事故の「加害者家族」に起きていたこと
10月8日、東京地裁。2019年4月19日、東京・東池袋で当時87歳の被告人が運転していた車が暴走し、2名が死亡、9名が負傷する大惨事となった「池袋暴走事故」の初公判が開かれた。
「はじめに、今回の事故により奥様とお嬢様をなくされた松永様とご親族の皆様に心からお詫び申し上げます。最愛のお二人を突然失った悲しみとご心痛を思うと言葉もございません。また、お怪我をされ苦しまれた方々とご親族の皆様にも深くお詫び申し上げます。起訴状の内容については、アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶しており、暴走したのは車に何らかの異常が生じたため暴走したと思っております。ただ暴走を止められなかったことは悔やまれ、大変申し訳なく思っております」
被告人は罪状認否でこのように述べ、過失を否定した。
「なぜこんなことになったのか、これからどうしたら良いのか……」
2019年4月下旬、筆者が代表を務めるNPO法人WorldOpenHeartの「加害者家族ホットライン」に、父親が運転していた車が事故を起こし、多数の被害者を出してしまったという家族から電話が入る。
被害者の方々の容態が心配で、車に同乗していた母親も生死にかかわる重傷だという。何日も食事が喉を通らず全く眠れていない。言葉は少なく、憔悴しきっている様子が伝わってきた。
精神的に相当追い詰められている相談者に対し、筆者は精神科に行くよう促し、無事を確認するため何度か電話を入れていた。相談は匿名で、事件の詳細をあれこれ聞くことはしない。相談者が、「池袋暴走事故」の加害者家族だと判明したのはだいぶ後のことだった。
バッシングに苦しむ日々
「正直、逮捕してもらいたかったです……」
家族はそう話す。
被告人が逮捕されなかったのは、旧通産省の官僚だったからだという「上級国民」バッシングが始まった。ネット上では、「死刑にすべき」といった厳しい批判や被告人への罵詈雑言で溢れ、被告人の自宅には嫌がらせの電話や手紙が届くようになった。バッシングは被告人だけにとどまらず、「家族も同罪」「家族も死刑」といった書き込みもあった。