なぜ「論破」したがる人が増えたのか
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12日付の自身のツイッターで、すかさず〈人の命を軽く見る発言だけはさすがにダメ〉〈今度会ったら論破するまで怒り続ける〉などと謝罪したおかげで、“不肖の兄”を持って〈苦労させられている〉といった同情も集まった。
「松丸さんの言うことはもっともなんですが、ただ単に〈今度会ったら、兄を叱っておく〉というのではなく、〈論破するまで〉というあたりがイマドキですね」と話すのは、ITジャーナリストの井上トシユキ氏だ。
確かに最近はネット上で「論破」という言葉をよく目にする。その象徴的な存在がネット掲示板「2ちゃんねる」の開設者で「ひろゆき」こと西村博之氏(44)で、「論破王」とも称されている。
「時に逆張り発言で常識的な大人を言い負かしていくひろゆきさんは、とりわけ10代、20代の若者にとっては強い格闘家のようにカッコイイ存在に映るようですね。ひろゆきさんに憧れるフォロワーも増えている。今となれば他人の意見に反論して〈はい、論破〉と書き込むネット民も普通に見かけますし、私が月に1、2回ほど教えている学校でも先生を論破しようと挑んでくる生徒がいたりします」(前出の井上氏)
ちなみに、西村氏のYouTubeチャンネルの登録者数は110万人を超える。論破したがる人が増えているのだが、問題は、ネット上の論破は一方的で、議論してよりよい答えを見つけようというわけじゃないことだ。
米心理学博士で医学博士の鈴木丈織氏は「他人より優れていると思いたいという欲は誰にでもあるものですが」と前置きして、こう言う。
「相手を論破したいという欲が、より多くの知識を身につけるという努力の原動力になるのなら健全です。しかし、大した努力もせずにただ論破したいという欲望になると厄介ですね。例えば、お腹が空いたという食欲は食べれば満たされますが、よりおいしい物が食べたいという欲望には際限がないのと同じで、ひたすら言い負かし続けたいという目的のために、手段を選ばなくなっていく恐れがある。相手の論理的な矛盾点を突くというディベートからかけ離れて、単なる揚げ足取りや人格攻撃にエスカレートしていく。不毛な論破は憎悪しか生み出しません」
ネット上の論戦は優越感を満たす、お金のかからない娯楽、では済まされなくなってくる。勝つために過激な発言をして大炎上も……。“論破ブーム”の根は意外と深そうだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/58bfd3d90733d1efc9bc1459533822b8c7a58fde
https://i.imgur.com/n8VNenZ.png