【オサカナGO】魚類スキャン計画がスタート、約3万種完遂目指す CT画像のアーカイブを無料で公開、米ワシントン大
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【オサカナGO】魚類スキャン計画がスタート、約3万種完遂目指す CT画像のアーカイブを無料で公開、米ワシントン大
引用元: 【動物学】魚類スキャン計画がスタート、約3万種完遂目指す CT画像のアーカイブを無料で公開、米ワシントン大
魚類スキャン計画がスタート、約3万種完遂目指す | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/072500275/「サメやエイのような軟骨だけしかない魚が、硬い骨をもつ魚のように動き回ることができるのはなぜなのだろう?」。15年以上も前にこんな疑問を持ったことから、バイオメカニクスの専門家である米ワシントン大学のアダム・サマーズ教授の奇妙な知的探求の旅は始まった。
サマーズ氏はある日、トビエイが食べるために貝を砕く方法を知ろうと、CTスキャンを利用してエイの骨格をデジタル化した。異なる角度からX線を照射し、得られたデータを組み合わせて3次元画像にすることで、エイの体内の構造を詳細に知ることができた。(参考記事:「エジプトの猫ミイラ、新X線技術で撮影に成功」)
このデジタル画像がエイの生物学的特徴や行動や歴史について貴重な洞察を与えてくれたことから、サマーズ氏のなかで大胆なプロジェクトの構想が膨らみ始めた。彼はこの春、アマゾン川のハチェットフィッシュの仲間(Thoracocharax stellatus)から、大西洋西部の藻場をうろつくウチワハギ(Monacanthus ciliatus)や、ミシガン湖で見つかったスポッテッドガー(Lepisosteus oculatus)まで、地球上の2万5000~3万3000種の魚のすべてをスキャンして、その画像をデジタル化するプロジェクトにのりだした。
米ワシントン州サンファン諸島にあるワシントン大学フライデーハーバー研究所を拠点とするサマーズ氏は、以前から、こうした画像がバイオメカニクスの基本的な謎の解明に役立つことに気づいていた。彼は、複数の染料を用いて魚の骨格標本を染色し、複雑で美しい画像を作ることでもよく知られている。(参考記事:透明骨格標本「スケイリーヘッド」、「チューブスナウト」、「ツバクロエイ」、「イボダンゴ」)
「私は、魚がどのようにしてものに吸着したり、穴を掘ったりするかを調べ、自然界をヒントにした新しい材料や新しい手法の開発に取り組んできました。例えば、穴を掘る魚の骨格は、穴を掘るロボットのヒントになるのです」とサマーズ氏。「魚の防御器官についてのプロジェクトも進めています。魚の防御器官はどのように進化してきて、機動性を失うことなくウロコなどの硬い鎧を身にまとうという課題をどのようにして解決したのかという研究です」(参考記事:「“最古の顔”をもつ魚、現生と同じ顎骨」、「「海のハンター展」に行ってみた。」)
けれども、魚のスキャンには多額の費用がかかるため、彼が米マサチューセッツ大学アマースト校とハーバード大学比較動物学博物館の大学院生として画像の作成を始めたときには、主にボストン地域の医療センターに頼み込んでCTスキャンを使わせてもらっていたという。
「当時は資金がなかったので、病院のCTスキャンのオペレーターにチョコレートバーと面白い話を持っていくことが見返りでした」とサマーズ氏は笑う。
技術が向上すると、彼は民間から34万ドルの寄付を集め、昨年の秋に最高級のCTスキャナーを購入した。そして海から約50mのところに装置を設置し、より大きな可能性を模索しはじめた。
「私たちにヒントを与えてくれる自然界の生物を直接スキャンできるようになったのです」と彼は言う。
この装置は、グレープフルーツ2個分ほどのサイズまでのものや動物をスキャンできる。サマーズ教授はほかの研究者にも装置を使わせているが、撮影対象は博物館に収蔵されている標本に限定している。彼は画像をウェブにアップロードし、「Open Science Framework」というウェブサイトで無料で公開している。また、ほかの科学者と協力して、マグロやカジキなどの大きい魚もデジタル化しようとしている。(参考記事:「クロマグロ 乱獲の果てに」、「虹色の狩人 バショウカジキ」)