【動物学】超高速で泳ぐメカジキ、速さの秘密は「潤滑油」 油を分泌して自らをコーティング、水の抵抗を減らす
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【動物学】超高速で泳ぐメカジキ、速さの秘密は「潤滑油」 油を分泌して自らをコーティング、水の抵抗を減らす
引用元: 【動物学】超高速で泳ぐメカジキ、速さの秘密は「潤滑油」 油を分泌して自らをコーティング、水の抵抗を減らす
超高速で泳ぐメカジキ、速さの秘密は「潤滑油」 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/a/071200043/突き出した吻(ふん)で水を切り裂き、時速100kmで泳げるとも言われる魚、メカジキ(Xiphias gladius)。新たな研究で、メカジキの体にこれまで知られていなかった腺が発見され、これが高速で泳げる鍵となっている可能性があることがわかった。
学術誌『Journal of Experimental Biology』に掲載された論文によると、剣のように鋭いメカジキの吻の付け根には、油を生成する腺がある。メカジキが泳ぐときには、この腺から脂肪酸の混合液が分泌され、毛細管と小さな孔を通じて皮膚へと送り出されている。(参考記事:「メカジキの吻はなぜ折れないのか?」)
研究者らは、この油分がメカジキの頭部前面に撥水層を作り出し、水の抵抗を弱めて楽に泳げるようにしているのではないかと推測している。
今回研究チームを率いたオランダの海洋動物学者ジョン・フィデラー氏によると、メカジキのようによく知られた魚の加速のための器官がこれほど長い間知られていなかったことに驚いたと言う。
秘密は潤滑作用
流体力学に関するブログ「FYFD」を執筆している航空宇宙工学者のニコル・シャープ氏は、「油のような疎水性の液体層で魚をコーティングすれば、水の抵抗は弱まります」と述べている。「水は魚の皮膚に付着することなく、油の上を滑っていくでしょう」(参考記事:「ヘビのウロコに「剥がれない潤滑油」、初の発見」)
とは言え、これを実際に確認する作業は容易ではない。メカジキを捕らえておくことはできないし、野生のメカジキは高速で泳いでいるため観察は困難だ。(参考記事:「海の弾丸、マグロが高速で泳げる秘密とは」)
そこでフィデラー氏のチームは、20年前に撮影されたメカジキのMRI画像(核磁気共鳴を使って生体内部を撮影した画像)を精査することにした。その画像から、彼らは油を輸送する毛細管と、小孔の周りに並ぶごく小さな鱗状の突起を発見した。
研究者らは、この突起が水と魚の皮膚との間に微小なエアポケットを生み出し、水を滑りやすくしていると推測している。これは流体力学の用語で言う「超撥水面」であるとフィデラー氏は述べている。
皮膚は超撥水?
しかしシャープ氏はこの意見には懐疑的だ。「油を分泌する腺と毛細管系が潤滑作用をもたらすという仮説には納得できます。しかしメカジキの頭部が「超撥水」状態であるかについては疑問が残ります」
その理由のひとつは、超撥水面を作り出すには突起の数が十分ではないと思われることだという。
シャープ氏は、これは「超撥水面」ではなく、凸凹のある面(カジキの皮膚)が別の液体層(油)によってコーティングされている「液体含浸面」であると考えている。たとえば米マサチューセッツ工科大学はこの作用を活用し、軽く振るだけでケチャップを最後の一滴まで使い切ることができるボトルを開発している。
進化競争の好例
高速で泳げるというのは、単に驚くべき能力というだけにとどまらない。スピードはメカジキという生物が成功するうえで欠かせない能力だとワラント氏は言う。「油を分泌する腺が進化したことは、メカジキの競争力となります。獲物を上回るスピードで泳ぐことができますから」
「新たに発見された腺で、メカジキが捕食者として優位に立っていることがわかります。これは生き物たちが進化の競争をどのように競い合っているかを示す好例です」