北による「電磁パルス攻撃」の可能性 日本中の機器が破壊され、大規模停電に 日本の対策はなし
|
|
北による「電磁パルス攻撃」の可能性 日本中の機器が破壊され、大規模停電に 日本の対策はなし
可能性が指摘されている。上空で核爆発を起こし、広範囲で都市機能を破壊するものだ。北朝鮮は既に
攻撃能力を持つとみられるが、日本の対策はほぼ手つかずで、専門家からは懸念の声が上がる。(小野晋史)
■大規模停電の恐れ
電磁パルス攻撃は、高度30~400キロの上空で核爆発を起こして行う。その際に生じたガンマ線が大気を
構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子に含まれる電子がはじき飛ばされて雷のような巨大な電流が
発生するなどした結果、強力な電波の一撃である電磁パルスが地上に襲いかかる。
電磁パルスは送電線を伝ってコンピューターなどの電子機器に侵入。その電圧は5万ボルトに達するため、
機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模な停電も発生すると予測されている。核爆発に
伴う熱線や衝撃波は、地上には届かない。
影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン
(TNT火薬換算)の場合、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達する。
1962年に米国が北太平洋上空で行った高高度核実験「スターフィッシュ・プライム」では、高度400キロの
宇宙空間での核爆発で電磁パルスが発生。爆心から1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が
引き起こされ、その威力が実証された。
(略)
■「日本は無防備」
電磁パルス攻撃は地上への核攻撃と違い、ミサイルの弾頭部分を大気圏再突入時の高熱から守る技術は
必要ない。小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけだ。
米国防総省の内部では、北朝鮮が既に核弾頭の小型化に成功したとの見方もある。成功が事実なら、
弾道ミサイルや人工衛星を搭載したロケットが上空を通過するとみせかけ、日本の真上の宇宙空間で
核爆発を起こすことも可能だ。日本の領土や領海に着弾する恐れがない場合、迎撃ミサイル発射の
タイミングを逃す可能性は十分にある。
電磁パルス攻撃は米国やロシア、中国も能力を保有しているとされる。核爆発以外の方法でも可能だ。
米露中のほか、北朝鮮や中国の脅威にさらされる韓国や台湾でも、インフラや軍などの防護対策が進んでいる。
これに対し日本は取り組みが遅れている。電子戦に関わる研究開発を担う防衛省の電子装備研究所は、
電磁パルス攻撃を受けた場合に「(自衛隊の)指揮・統制機能が無力化される恐れ」があるとして、今秋にも
防護技術の動向調査を始める。
だがその内容は攻撃の脅威に関する調査や、防護技術の実現に向けた課題の明確化など基礎的な検討にとどまる。
電磁パルスが防衛装備品に与える影響に詳しい企業関係者は「日本には、電磁パルス攻撃への備えがまともに
存在しない。社会全体が無防備な現状は非常に危険だ」と警鐘を鳴らす。